「ブルーサファイア」エレジー㊸

 私達は別荘の東側にあるサイドテラスで、飲物を呑んだ後、カノン先生の後について、南のテラスに出てアトリエに向かいました。  南の空は晴れていて、瀬戸内海の島々がくっきりと浮かんでいました。東側から2番目の部屋の入口まで来た時、カノン先生が言いました。  「この部屋が私のアトリエです。右隣、サイドテラスのすぐそばにあるのが、私…

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「ブルーサファイア」エレジー㊷

 私達は丘を下って、別荘に帰ってきました。私達の後ろを歩いてきた管理人の鬼城さんが声をかけました。  「カノンさん、夕食は何時頃になさいますか?」  「夕食も明日の朝食も私が作るから、食事の用意はいいわよ」  「それはいけません。私が用意いたします」  「鬼城さん、私がそうしたいのよ。……お願いします」  …

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「ブルーサファイア」エレジー㊶

 A先輩がカノン先生に質問しました。  「なぜ、画家になることを、断念されたのですか?」  「そうじゃなくて、その気が無くなったのよ」  「M美術大学を出られて、しかもN絵画展で特選を受賞され、才能を認められたばかりなのに」  「だからって、画家になるとは限らないわ」  「それでは、お父さんの会社に勤務され…

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「ブルーサファイア」エレジー㊵

 A先輩と私は、カノン先生の後について別荘の前のロータリーを横切って、右手の林の中に入って行きました。  遊歩道の周囲は木々が密集して茂っており、薄暗い空間で静かでした。時々鳥の鳴き声が聞こえる位で、私達の他には人の気配もありませんでした。  カノン先生は無言でA先輩と私の前を歩いていましたが、歩みを進めながら私達の方を振り…

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「ブルーサファイア」エレジー㊴

 カノン先生が運転するBMWは広島県の海岸道路を走っています。5月初旬に私達が山小屋風のホテルに行く途中、バイクのワル3人組と闘った、あの美しい海水浴場はもうすぐです。  ところが、その海水浴場の手前で、カノン先生はBMWのハンドルを左に切りました。BMWは、山手の舗装された斜面道路に入りました。  BMWは、林の中に点在す…

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「ブルーサファイア」エレジー㊳

 A先輩は、沈黙していましたが、しばらくして、カノン先生の質問に答えました。  「父は、タンカーの船会社を経営しています。中小企業です」  「A君は弁護士志望だけど、お父さんの会社を継がないの?」  「兄が後継者なので、僕は自由にやっています」  「そうなの」  カノン先生は、今度は私に質問しました。 …

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「ブルーサファイア」エレジー㊲

 A先輩は真剣な表情で、じっとカノン先生の横顔を見つめていました。それは信じられないという顔付きでもあったのです。    「A君、私が変なこと言ったから、驚いたのね」  そう言って、カノン先生はBMWを運転しながら、チラリとA先輩の方を向いて微笑みました。  それに合わせるように、A先輩が質問しました。  「……カ…

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「ブルーサファイア」エレジー㊱

 8月下旬の土曜日の午後、私とA先輩は、城山の麓にあるロープウェイ乗り場の駐車場でカノン先生を待っていました。  先日、カノン先生から私の家に電話があり、私が不在だったので、私の母が電話に出たのです。それで母から指定された日時と場所を聞き、ここに来たのです。  約束の時間になった時、黒色の車がやって来ました。私とA先輩は、そ…

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「ブルーサファイア」エレジー㉟

 カチンときた私は、A先輩に皮肉を込めて、少し強い口調で訴えるように言いました。  「A先輩、いつも冷静ですね。先輩は頭が良いのでしょう? ……カノン先生の悲しみの理由を、先輩は、すでに察していたのじゃありませんか? ……どうなんですか?」  「どうしたんだ、トラ君! そんなこと、僕にも分かるはずないじゃないか。……それに、…

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「ブルーサファイア」エレジー㉞

 私は、B新聞のカノン先生の記事をさらに読み進めました。それは、驚くべき記事でした。週刊誌でいえば暴露記事に相当する、プライバシー侵害(私生活上の知られたくない事実)で訴えられる可能性のある内容が書かれていたのです。記事内容は次の通り(要旨抜粋)。  「以下の内容は、F君の友人(大学の同級生)等の話による」  「大学2年生の…

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「ブルーサファイア」エレジー㉝

 2週間目のキャンプ訓練を終えて、「ただいま!」と、いつも通り、私は自宅の玄関から靴を脱いで廊下を通り、和室に入って寝転びました。  その時、母がふすまを開けてニコリと笑って、「おかえり、お疲れ様だったね」と言って入って来ました。母は、なぜか右手に地方新聞のB新聞を持っていました。  瀬戸内海地方の私たちの町の周辺地域には地…

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「ブルーサファイア」エレジー㉜

 中学1年生になった時、私は母の勧めで、近所の仲の良い同級生と2人で、第1期生としてボーイスカウトに入団することになりました。  母は、私が我が道を行くという自由奔放な性格であることを心配して、ボーイスカウトに入れて、団体生活を身に付けさせようとしたのです。  入団してみると、地元のボーイスカウト団の第1期生となる中学1年生…

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プロフィール

Romy Rurikawa
あらゆる乗り物が好きなのでよく旅に出ますが、そこは日常の喧騒から逃れて自分をみつめ、淡いふれあいもある、やすらぎの空間なのです。