「ブルーサファイア」エレジー㉕

 私は、カノン先生に質問しました。

 「このホテルを描いたあの絵は、印象的な美しい絵ですね。ひょっとして、カノンさんが描かれたのですか?」

 「ええ、そうなのよ。私が描いたわ。兼永のおじさんに頼まれたの」

 A先輩も絵を見ながら言いました。

 「単なる風景画とは違うのですね。ハッとさせるような独創的な美しい絵ですね」

 「ありがとう。お世辞でも嬉しいわ」

 「お世辞じゃありません! とても魅力的な絵です。僕もお金を出して買いたい位です」

 「あら、A君、ずいぶん私の絵を気に入ってくれているのね。……それなら、今度、何か描いてあげるよ」

 私は、驚きました。カノン先生が、絵を描いてくれると言ったのです。A先輩も、カノン先生が、絵を描いてあげると言ったので、驚いた様子でした。A先輩は質問しました。

 「ええっ、本当ですか。絵にもよるでしょうが、カノンさんの絵の価格は、例えば、F10号(53.0×45.5cm)で、おいくらですか?」

 「100万円かな!」

 「……100万円ですか!……」

 「フフフ……冗談よ。私の絵で、お金なんかとれないわよ。私の絵は、まだまだなのよ。本当は、恥ずかしい位なのよ。この絵も、おじさんがどうしてもというから、仕方なく、ここに掛けているのよ」

 「でも僕には……魅力的です」

 「とにかく、すぐには無理だけど、今度、描いてA君にプレゼントするわ。トラ君にもね。サイズはF5号(35.0×27.0cm)でね」

 「えっ、本当ですか! ありがとうございます!」

 私は、カノン先生が絵を描いてくれるので、嬉しくて、「ヤッター」と叫びたい位でした。

 「いいわよ。仲間になってくれた記念に描きます。トラ君はどんな絵がいいの?」

 「空を飛んでいるジェット旅客機がいいです」

 アレッという感じでA先輩が私に言いました。

 「おいおい、トラ君は、船だろう。船が好きだろう。海を走るタンカーじゃないの?」

 「そうですけど、空を飛ぶ、ジェット旅客機もかっこいいから」

 私は、タンカーが好きですが、ジェット旅客機も小さい頃から好きでした。タンカーなら自分で何枚も描いているけど、カノン先生の描いた独創的なジェット旅客機を見たいと思ったのです。



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 「ジェット旅客機ね、分かったわ。A君は、何を描いてもらいたい?」

 「……こんなお願いしていいですか?……あそこの僕達がいた、外のテラスの空中庭園のソファに座っているカノンさんの自画像をお願いできますか?」

 すると、今まで微笑んでいたカノン先生の顔が、ハッと驚いた顔になりました。それからカノン先生はA先輩を見つめました。真剣な目でした。

 急にカノン先生に見つめられたA先輩は、どぎまぎした様子で、ジュースのガラスコップを口に運び、飲み干し、それからカノン先生に申し訳なさそうに言いました。

 「あの、……すみません。やはり、ご迷惑ですよね。ほかのものを考えます」

 カノン先生は、それには答えず、うつむきました。

 カノン先生は、うつむいたまま、なにか考えている様子でしたが、顔を上げると、A先輩に聞きました。

 「A君、……あそこに、……あの離れたところに掛かっている絵を見たの?」

 A先輩は、何のことか分からず、キョトンとしていました。私も、カノン先生に言われて、遠く離れたところに、もう1枚、絵が壁に掛かっていることに気がつきました。

 「いいえ、僕は、見ていません。あそこに絵があるのも、今、言われて初めて気がつきました」

 「……分かったわ。A君とトラ君、一緒にあの向こうの絵を見に行きましょう」

 私達は、席を立ち、カノン先生が言った、もう一つの絵を見に行きました。

 その絵の前まで来ると、A先輩と私は、「あっ」と声を上げました。

 その絵は、なんと、私達が先ほど座っていたテラスの空中庭園のソファに座っているカノン先生が描かれていたのです。しかも、なぜかアラブの白い衣装を着ていたのです。(続く)




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プロフィール

Romy Rurikawa
あらゆる乗り物が好きなのでよく旅に出ますが、そこは日常の喧騒から逃れて自分をみつめ、淡いふれあいもある、やすらぎの空間なのです。