"「ブルーサファイア」エレジー"の記事一覧

「ブルーサファイア」エレジー㉛

 全校生徒が見守る中、壇上に立ったカノン先生は、緊張しているように見えましたが、そこで、なんと、カノン先生は教師辞職の挨拶をしたのです。  カノン先生が中学校の美術教師を辞めるという挨拶を聞き、体育館に集まった生徒達から「え~」と驚きの声が上がり、ざわめきが起こりました。  私も、とても驚き、声も出ず茫然と立ち尽くしていまし…

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「ブルーサファイア」エレジー㉚

 6月になりました。中学3年生の1学期の中頃のことです。美術の授業で、カノン先生は帰宅後の宿題として生徒に自由題で水彩画を描かせました。  私はタンカーの絵を描くことにしました。港に行って、停泊中や航行しているタンカーを見ながら写生しました。  それから、自宅に帰り、瀬戸内海の島々と、海上を航行するタ…

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「ブルーサファイア」エレジー㉙

 ゴルフの後席で、私は運転中のカノン先生に続けて話しかけました。  「さらに、あの絵の中で、カノンさんがベルトに差していた短剣は、アラブ族の短剣、ジャンビーヤではなく、トプカプの短剣のレプリカでした」  「トプカプの短剣?」  「オスマン帝国の王族の短剣です。エメラルドとダイヤモンドが組み込まれた短剣で、現在は、トルコ…

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「ブルーサファイア」エレジー㉘

 私たちの乗ったゴルフは、海岸道路をゆっくりと走っています。進行方向の左手には、瀬戸内海が広がっています。  ゴルフを運転しながらカノン先生は、言いました。  「A君は弁護士を目指しているのね。どんな弁護士になりたいの?」  「法律の専門家として、弱い立場の人の力になりたいと思っています」  「しっかりしているの…

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「ブルーサファイア」エレジー㉗

 当時、私は、「アラビアのロレンスの秘密」という本を読んでいました。また、映画「アラビアのロレンス」も観ていました。  ところで、さっきの絵の中の下に記されていた “Son Altesse Kanon”の“Son Altesse” (サン・ナルテス)の意味は、私は知っていました。  このフランス語は、私の記憶にしっかり残って…

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「ブルーサファイア」エレジー㉖

 私はA先輩に言いました。  「さっき、A先輩が希望した絵が、すでに描かれています……」  A先輩がカノン先生に質問しました。  「この絵はカノンさんが描かれたのですか?」  「これは私が描いた自画像ではなく、他の人が私を描いたの」  「カノンさんがこの構図を希望されたのですか?」  「いいえ」 …

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「ブルーサファイア」エレジー㉕

 私は、カノン先生に質問しました。  「このホテルを描いたあの絵は、印象的な美しい絵ですね。ひょっとして、カノンさんが描かれたのですか?」  「ええ、そうなのよ。私が描いたわ。兼永のおじさんに頼まれたの」  A先輩も絵を見ながら言いました。  「単なる風景画とは違うのですね。ハッとさせるような独創的な美しい絵です…

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「ブルーサファイア」エレジー㉔

 すると、カノン先生の父親は、今度はA先輩に話しかけました。  「有坂さんも、背が高いですね。高校生になれば、そろそろ将来の夢とか、仕事のことも考えられるでしょうが、もう決めておられますか?」  「はい。……なれるかどうか分かりませんが、弁護士を……夢見ています」  「そうですか……弁護士ですか、ご立派ですね。では志望…

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「ブルーサファイア」エレジー㉓

 テーブルに並んでいる、まぶしい位の豪華な中華料理の数々は、焼き豚と麻婆豆腐以外は、ほとんど私の知らない料理ばかりでした。  今まで、私とA先輩がよく食べた中華料理といえば、チャーハン、小籠包、ラーメン、あんかけ焼きそば、中華丼、ギョウザ、レバニラ炒め、チンジャオロース位のものでした。  私は、目の前の中華料理を見て、感謝感…

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「ブルーサファイア」エレジー㉒

 カノン先生はしばらく沈黙していましたが、手を上げてホテルの男性スタッフを呼ぶと、レモンスカッシュを3つ注文しました。  やがて、女性スタッフがレモンスカッシュを運んできました。男性スタッフも、女性スタッフも、カノン先生に対して礼儀正しく、すごく気を使っているようでした。  カノン先生は、なぜか、少し沈んでいるような感じでし…

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「ブルーサファイア」エレジー㉑

 私達の乗った青いゴルフは、山手の丘の整備された広い道路をどんどん上って行きました。  かなり走ると、やがて高い丘の上に、どう表現したらいいか、山小屋というか、ログハウス風の大きな建物が建っているのが見えてきました。カノン先生が言いました。  「あのホテルよ」  近づいてみると、造りのがっしりした、かなり大きなホテルで…

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「ブルーサファイア」エレジー⑳

 しばらくカノン先生は何かを考えているようでしたが、口をすぼめて少し怒った口調でA先輩に向かって言いました。    「不思議な人ですって?……ひょっとしてA君は私を、……変な人だと思っている?」  「ハハハ、……少し」  「アラッ、否定しないのね!」  すかさず、私が、思い切って本音を吐露しました。  「合気…

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「ブルーサファイア」エレジー⑲

 カノン先生は、なぜか海を見つめていました。私は、あの男たちが穴から出て、やって来るかも知れないと、ハラハラしていました。A先輩が言いました。  「カノンさん、早く出発しましょう。あの男たちが穴から出てきて、追いかけてこないうちに」  「そうね。だけど、先にトラ君の治療をしましょう」  そう言ってカノン先生はゴルフに乗…

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「ブルーサファイア」エレジー⑱

 私たちの前までやって来ると、リーダー格と思われる男が、カノン先生をじろじろ見ながら言いました。  「さっきは、交差点で、失礼しました。チラッと見たら、きれいなお嬢さんが運転しておられたので、びっくりしましたが、バカヤローと言われたので、お詫びに来ました」  私はカチンと来ました。私が中学生の年頃と見て、私が「バカヤロー」と…

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「ブルーサファイア」エレジー⑰

 「あの大型バイク3台は、Uターンして引き返してきたのですね。それにしてもスレスレで、無茶な抜き方ですね」  そう言いながらA先輩が前方のバイクを、怒りを込めて指差しました。私も不安になり、つぶやきました。  「僕が ”バカヤロー” と叫んだので追いかけてきたのかもしれない」  「大丈夫よ。気にしないで」  そう…

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「ブルーサファイア」エレジー⑯

 「当たりました! カノンさん!」  私とA先輩は声を揃えて叫びました。  A先輩は、とにかく中華料理が大好きなのです。私も中華料理が好きなので、A先輩と2人でよく一緒にあちらこちらの中華料理店に食べに行っていたのです。  A先輩は拍手しました。  「驚きました!僕は中華料理がとても好きなんです」  私も、…

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「ブルーサファイア」エレジー⑮

 カノン先生には、やはり、彼氏がいたのです。  A先輩は少しおどけて言いました。  「うわ~、やっぱり。……一緒に絵を描いたりとか」  カノン先生はうなずきました。  「そうね。そんなこともあったわね。だけど、彼には、今は会えないのよ」  「遠くにおられるのですか、外国とか?」  「そうじゃないけど……

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「ブルーサファイア」エレジー⑭

 フォルクスワーゲン・ゴルフは海岸沿いの国道を走っています。空は晴れていて、車の進行方向の右手には、瀬戸内海の青い海が広がり、島々が浮かんでいます。  車を運転しながら、カノン先生は、A先輩に向かって、「有坂君は西島君のことを “トラ君”と呼んでいるのね」と言いました。  「ええ、仲間ですから。親しい仲間は、みんなそう呼んで…

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「ブルーサファイア」エレジー⑬

 級友達から貴公子と呼ばれているA先輩は、簡単に人に謝る人ではないのです。  A先輩から一方的に謝罪されたカノン先生も少し驚いた様子でした。すると、カノン先生は、A先輩と私の方を向いて言いました。  「少し歩きましょうか」  私達は、もう一つの円型噴水の方へ向かって歩き始めました。  「有坂君が謝ってくれるなんて…

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「ブルーサファイア」エレジー⑫

 カノン先生は広島で私達にひどいことを言ったと思い、お詫びのつもりで食事に誘っているのでしょうか。カノン先生の真剣な表情を見て、私は断り切れませんでした。  「……分かりました。A先輩に伝えてみます」  「ありがとう……きっとよ」  私は、帰宅しようと一礼して、自転車置き場の方へ歩きかけました。すると、後ろからカノン先…

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商品紹介

プロフィール

Romy Rurikawa
あらゆる乗り物が好きなのでよく旅に出ますが、そこは日常の喧騒から逃れて自分をみつめ、淡いふれあいもある、やすらぎの空間なのです。